
飲食店や施設など、大量にご飯を炊く現場においては、炊飯器の選び方ひとつで、日々の業務の流れや提供するご飯の品質が大きく変わってきます。
一度に数十キロもの米を安定して炊き上げる炊飯能力、そして現場に必要な機能を備えているかどうか――その違いが、現場全体のパフォーマンスに直結するといっても過言ではありません。
とはいえ、業務用の炊飯器にはさまざまなタイプがあり、どれが自分の店舗や施設に本当に合っているのかを見極めるのは簡単ではありません。
このコラムでは、そんな悩みを持つ方のために、最適な一台を見つけるためのヒントをご紹介します。
業務用炊飯器を選ぶ際、最も気になるポイントのひとつが「どれくらいの容量が必要か」という点ではないでしょうか。
家庭用の炊飯器では「3合炊き」「5合炊き」といった表現が一般的ですが、
業務用では「升(しょう)」や「リットル(L)」といった単位で容量が表記されます。
1升は約10合に相当し、目安としてはお茶碗約20杯分にあたります。
提供する食数やピーク時の炊飯回数を想定して、無理のない容量を選ぶことが、業務の効率とご飯の品質を保つポイントになります。
1升(しょう)ってどれくらい?
1升 = 約10合
1合で炊けるご飯は約320g(普通盛りのお茶碗で約2杯分)
1升の炊飯器で炊けるご飯は約20杯分ということになります。
2升炊き(約20合)=ご飯の量: 約40杯分
小さめの定食屋さん、個人経営の飲食店などに
3升炊き(約30合)=ご飯の量: 約60杯分
中規模のレストラン、社員食堂などに

業務用炊飯器の加熱方式と選び方
業務用炊飯器の加熱方式には、主に「マイコン式」「ガス式」「IH式」の3種類があります。
それぞれの加熱方式には特徴があり、店舗や施設で求められる炊き上がりやオペレーションの効率に大きく影響します。
また、炊飯器には「炊飯と保温の両方が可能なタイプ」や「炊飯専用」「保温専用」といった、用途に特化したタイプもあります。
ここでは、加熱方式ごとの特徴と、それぞれの選び方について詳しく解説します。
ガス式炊飯器:大量炊飯に強い、高速炊飯
ガス式炊飯器は、直接火を使って釜を加熱する方式で、非常に高温で迅速にご飯を炊き上げることができます。
特に大量の米を一度に炊くのに優れた性能を発揮します。
短時間で炊飯可能

高温で迅速に炊き上げるため、大量炊飯にも対応。
優れた炊き上がり

高温で一気に炊き上げるため、米がふっくらと仕上がり、香りも豊か。
ランニングコストが安価

ガス代が比較的安いため、大量炊飯時のコストを抑えやすい。
注意ポイント
ガス接続工事が必要な場合があり、初期設置の手間やコストが発生。
火を使うため、設置場所の換気や安全対策が必須。
代表的なメーカー


マイコン式炊飯器:低コストでシンプルな操作
マイコン式炊飯器は、温度をコンピューターチップで管理し、釜を加熱する方式です。
手軽でシンプルな操作が特徴ですが、加熱方法が限られているため、大量炊飯や高精度な温度管理には向きません。
低価格で導入が簡単

初期投資が安価で、予算を抑えたい店舗に最適。
シンプルな操作性

特別な技術や設定を必要とせず、誰でも使いやすい。
安全性が高い

電気式なので火を使わず安心。
注意ポイント
他の種類の炊飯器よりも火力が弱いため、炊き上がりにムラが出やすく、炊飯時間も長くなる傾向があります。
代表的なメーカー

タイガー ジャー炊飯器 JNO-A271

象印 マイコン 炊飯ジャー NS-QC36
IH式炊飯器:高精度で均一な加熱、炊き上がりの品質が安定
IH(Induction Heating)炊飯器は、電磁誘導を利用して釜全体を均一に加熱する方式です。これにより、ムラなく美味しいご飯が炊けます。
均一な加熱

釜全体が均等に加熱されるため、炊き上がりが安定し、高品質なご飯が得られます。
多機能

保温機能やタイマー、炊き込みご飯モードなど、便利な機能が充実しています。
安全性が高い

電気式なので火を使わず安心。
注意ポイント
IH炊飯器は、ガス炊飯器やマイコン炊飯器に比べて本体価格が高額になる傾向があります。また、高火力を維持するために多くの電力を消費します。
代表的なメーカー

タイガー IHジャー炊飯器 JNO-A271

保温ジャー(保温専用タイプ):炊き上がり後のご飯を維持
保温ジャーは、炊き上がったご飯を長時間保温するための専用機器です。
炊き上がり後のご飯を長時間保温

炊き上がり後のご飯を一定温度で保つことができ、長時間にわたって提供可能。
業務効率の向上

一度に大量のご飯を保温できるため、炊飯回数を減らし、時間と労力を節約できる。
使いやすさ

シンプルな操作で、炊飯器と一緒に使うことで業務効率化。
注意ポイント
長時間保温されたご飯は、細菌が繁殖しやすい状態になる可能性があります。衛生的な管理を徹底する必要があります。
代表的なメーカー


業態別の業務用炊飯器の選び方
レストラン・飲食店の場合
メニューのバリエーションに合わせた炊き方や品質を重視。特におこげや炊き込みご飯、白米の質にこだわりたい店舗に適しています。
おすすめの加熱方式
IH式炊飯器(均一な加熱ができ、美味しいご飯を提供)
ガス式炊飯器(大量炊飯が可能でスピーディーに対応)
おすすめ機能
炊き込みご飯やおこげ機能:特別メニューにも対応可能
保温機能:長時間温かいご飯を提供するために便利
タイマー機能:営業開始前にセットしておくことで、効率的にオペレーションができます。
小規模な飲食店・カフェ
少量の炊飯を美味しく仕上げ、コストパフォーマンスも重視されます。限られたスペースで使いやすく、操作が簡単なものが理想です。
おすすめの加熱方式
IH式炊飯器(均一な加熱で高品質なご飯を提供)
マイコン式炊飯器(シンプルでコスト重視)
おすすめ機能
保温機能:長時間温かいご飯を提供
タイマー機能:ランチタイムやディナータイムに合わせて自動で炊き上がる
社員食堂の場合
大量炊飯と効率化が求められます。炊き上がりの品質はもちろんですが、安定して大量に炊ける性能が重要です。
おすすめの加熱方式
ガス式炊飯器(一度に大量に炊け、時間の制約が少ない)
IH式炊飯器(安定した品質のご飯が提供でき、エネルギー効率も良い)
おすすめ機能
タイマー機能:多人数分の炊飯時間を調整可能
保温機能:長時間保温が可能で、食事のタイミングに合わせてご飯を提供
ホテル・バイキングレストランの場合
長時間保温が必要で、ご飯の品質を維持しながら大量に提供できる能力が求められます。
おすすめの加熱方式
IH式炊飯器(精密な温度管理で高品質なご飯が炊ける)
保温ジャー(長時間保温が可能)
おすすめ機能
長時間保温機能:提供時間が長いため、炊き立ての美味しさを保つ機能
炊き込みご飯機能やおこげ機能:バリエーション豊かなメニューに対応
病院・福祉施設の場合
柔らかいご飯やおかゆの提供が求められ、特別なニーズに対応できる炊飯器が必要です。安全でシンプルに使えるものが望ましいです。
おすすめの加熱方式
マイコン式炊飯器(シンプルで扱いやすく、操作が直感的)
IH式炊飯器(精密な温度管理でやわらかいご飯やおかゆに対応)
おすすめ機能
おかゆモードややわらかご飯モード:特別食に対応
保温機能:長時間温かい状態を維持